救いようのないコト

musicaparadiso2005-11-12

町田の女子高生殺人事件は、同級生の男子高校生の逮捕というショッキングな結末を迎えたけど、娘を一人で育てるために長距離トラックというハードな仕事を終えて、いつものように帰宅した母親が目にした光景を想像すると、被害者のお母さんのショックと悲しみははどれだけだったか・・・悲惨で救いようがない事件が起きてしまった。



そして、昨日テレビを見ていたら古館のニュースステーション北朝鮮の市場の映像が流れていたんだけど、まず驚いたのは、その画質なのだ。ここ数年、今まで脱北者を通してしか知ることのできなかった北朝鮮の人々の暮らしぶりが、「独占スクープ!潜入!北朝鮮ホニャララ」みたいなタイトルの特集などでよく目にするようになったんだけど、どれも画質は悪いし、手ブレもしていて見ていてストレスのたまるモノが多かった。けれど、昨日見た特集は画質もよくって、音声もしっかり入っていて、北朝鮮の人々の、ほんとに極貧という言葉しかあてはまらないような、酷い暮らしぶりがよく分かった。途中から見たので、詳細は分からないのだが、おそらく今までの潜入映像がそうだったように、中国との国境近くの市場のようだった。そこでは、栄養失調と寒さで足の指が無くなってしまって、歩けなくなった少年や、食べるものが無くって空腹のために動けなくなり、寒さをしのぐために、ジャージやジャンパーを体に巻き付けたままの子供の姿が映っていた。また、公園では、親を亡くした子供が、飢えのせいもあって、一人あてもなく、泣き叫んでいる。そこに通りがかった中年の男性が近づいてくる・・・子供をなだめるために近寄ったのかと思ったら、おもむろに泣き叫んでいる子供を平手で殴り始め、倒れた子供の腹を蹴りつけている。その横を、通りすがりの人々は何事もなかったかのように、見て見ぬふりをして通り過ぎてゆく。こんな光景はきっとまだましなほうなんだろう。だってテレビで流せるんだから。



しかし、きっとどんなに残酷で、悲惨な映像を見たとしても、最後に出てきた一人の老人の言葉に比べたら、たいしたことはない。その老人は栄養失調で失明し、詩吟のような歌を歌って市場を練り歩き、物乞いをして暮らしている。記者に「仕事もない明日を考えると、不安になりませんか?」と聞かれ、その老人はこう答えたのだ。



「食べ物もなく、仕事もなく、どんなに苦しいと思っていても、こうやって朝はやってくる。それは、金正日将軍がおられるからです。だから私は辛くはありませんよ」



この老人は、すぐ近くに、食べるものも仕事もあふれるほどあって、なかには働きたくないと言って大学を出るまで散々遊んできたというのに、まだ家の中で一日中ぬくぬくと過ごすことが出来るノーテンキな国があるってコトを知らないのだ。こんなに残酷な言葉はない。誰かが、この老人を救おうと思っても、きっとこの老人は心の目までもなくしてしまっていて、あの、独裁者を崇拝しながら飢え死にしていくしかないんだ、などと考えてしまった今日この頃、みなさまいかがおすごしでしょうか。



というわけで、この前ちょこっと書いたんだけれど、まだ書き足りないので、あの、欺瞞と偽善に充ち満ちた「ホワイトバンド」について書きたいと思う。あれをオシャレだと思って買って付けてる若い子が、結構いるらしい。なかにはスーツ姿のサラリーマンもこれみよがしに付けている。はっきりいってセンスなさすぎだ(笑)。そして、300円ぽっちで命を救った気になっている人も多いんだろう。まったく、どうしようもない勘違いだ。そんな鼻くそみたいな金額で、命を救おうなんて、傲慢だと思わないんだろうか。そんなこと、鼻くそほども思わないからこそ、堂々と付けていられるんだろうけど、人間の命なんて高くも安くもなるけど、いくら何でも300円でどうにかなるんだろうって考えること自体が厚かましい。



世界のあちこちで、それこそ時計の秒針が進んでいくようにどんどん人の命が失われている。その消えていく命のそれぞれに、この北朝鮮のような、いろんな悲しい事情があるんだろう。それを救おうと思ったって、こんなノーテンキな国でぬくぬくと育ってきた俺たちにできることなんて、何一つない。だって、だって自分たちがいかに恵まれているかってことを自覚も出来ないのに、他人が置かれている貧しさや厳しさが分かるわけないじゃないかと思うのだ。