野口宇宙飛行士を支えたもの

musicaparadiso2005-08-08

天候不順のため、本日8日に帰還予定だったスペースシャトルですが、帰還は明日になったようです。コロンビア号の打ち上げ失敗、チャレンジャー号の帰還失敗がディカバリー号に重くのしかかり、度重なる発射延期を乗り越えて宇宙へ旅だった野口宇宙飛行士。宇宙へ行くというのは、一瞬で命を失うリスクを常に抱えているような、まさに命がけの行為なんですね。無事に発射し、ISSとドッキングしてから、地球に送られてくる野口さんをはじめ、宇宙飛行士達の様子からは想像もできないですが、彼らは本当の意味でエリートだと思います。

エリートを辞書で引いてみると「ある社会や集団の中で、そのすぐれた素質・能力および社会的属性を生かして指導的地位についている少数の人。選ばれた者。選良。」と出てきます(三省堂大辞林』)。マスコミや私たちは「東大出のエリート官僚」「東大出のエリート銀行員」と使ったりしますが、「エリート」と呼ばれた人たちが汚職や、犯罪を引き起こすようになった。カネボウのような大企業が組織内で粉飾の方法を競い合い、道路公団暴力団が経営する土建会社と癒着し随意契約を繰り返す。こうした組織犯罪を行う人々はかつて「エリート」と呼ばれた人たちでした。

私は野口さんのような、人類の進歩のために命をかける人を「エリート」と呼ぶべきだと思います。学歴や年齢、人種など関係なく、大げさに言えば、彼らの行った行為が私たちの命を支えているんだなー、すごいな、というくらいの気持ちを「エリート」という言葉に託したい。我々の税金を湯水のごとく遣う公務員や、毎日、会計士の目をどうやってごまかそうか考えているサラリーマンでなく。

そんな野口さんを励まし、アメリカで野口さんの帰還を待っている家族を支えている一人の女性がいます。それは、チャレンジャー号の爆発事故でなくなったオニヅカ宇宙飛行士の奥さんです。彼女は事故後もNASAのヒューストン事務所で働き、やがて歴代の日本人宇宙飛行士に「日本人宇宙飛行士の母」と呼ばれる存在にまでなったそうです。

爆発事故で夫を亡くした彼女だからこそ、彼女の言葉には重みがある。発射を前にした宇宙飛行士たちの不安を理解することができるし、宇宙飛行士達もきっと耳を傾けるでしょう。これから命を賭して旅たつ宇宙飛行士に「がんばってきなさい」と心から言うことができるのは彼女のような悲劇を乗り越た人にだけ許されることなのかもしれません。